ヤマノイモ(ヤマノイモ科) 山薬(根)

ヤマノイモの仲間は世界に600種以上も知られています。栽培するナガイモは中国大陸原産で古く日本に渡来してきたものです。

八百屋の店頭にある銀杏薯(いちょういも)、仏掌薯(つくねいも)、長薯、一年薯(いちねんいも)など、いずれもナガイモの栽培品種です。

ヤマノイモを自然薯というのはこのナガイモと区別するためです。しかし、ナガイモも今日里の近いところでは野生化しています。山に入ってヤマノイモを採取に出かけるとき、葉がハート形で、葉が互生するオニドコロとよく間違われます。

形態

地下の芋は、茎、根の生長したものでなく、胚軸の部分が肥大生長したもので担根体(たんこんたい)と呼ばれるものです。長さは1mに達するものもあります。この芋は年ごとに新生交代して伸長生長をするもので皮は灰黄褐色をおび、肉は白色で堅くもろく、粘液があります。
茎は、つるで稜(りょう)があり、緑色でまばらに分枝します。葉は対生(たいせい)し、長柄があり長卵形から卵状の皮針形(ひしんけい)で先は尖っています。基部は心臓形で葉面は濃緑色、3脈が顕著葉の先がのびています。むかごは葉のわきに1個ずつつき、雌雄異株です。
5月ごろ葉のわきから3~5本の花茎(かけい)を出し白い花をつけます。雄花群は直立し、雌雄群は垂れ下がります。花後雄花には3個のはねのある蒴果(さくか)をつけます。

採取と調製

秋に葉が落ちてから掘りとり、水洗いしてから皮を除いて適当な長さに切り、初めは風通しのよいところで陰干しにし、ついで天日でよく乾燥させます。ナガイモからも同様に作ります。

薬効と用い方

強壮、強精薬として胃を丈夫にし、精力をつける効き目があります。また、慢性の下痢や、夢精、男女生殖器の衰弱にも用いられます。1日20gを煎(せん)じて3回に分け服用します。
多くは漢方薬としては八味地黄丸(はちみじおうがん)などに配合されるもので、一般にはとろろ汁として食用すれば効果があります。消化酵素も多く含まれていますので生食してもよく消化されます。

ヤマノイモ酒

ヤマノイモかナガイモの乾燥したものをきざみ約200gと砂糖100gにホワイトリカー1.6リットルに浸します。熟成には3か月を要します。1日1回30ミリリットルくらいを就寝前に飲むと滋養、強壮の効き目があるとされています。

出典:新日本法規出版株式会社 「明解 家庭の民間薬・漢方薬」524・525頁